第12集 ロールモデル集 日本語
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上智大学で学んだ私には、社会学者の鶴見和子先生の教壇での生き生きした姿が、強い印象として残っています。先生が南方熊楠の足跡をたどったフィールドワークについて話されたときには、この人物への好奇心と敬愛の念が、言葉の端々から溢れ出てくるようでした。また研究者としての先生を背後で支える、上智大学という組織の大らかさも伝わってきました。現在も本学の女性教員には、それぞれの関心に応じて好きな場所で好きな研究をするという、独立自尊の精神が息づいていると思います。また束縛や追従を嫌い、互いの自由を尊重する姿勢は、教員だけでなく女性職員や女子学生にも共有されており、こうした風土が、世界のどこへでも単身で出かけ、ボランティア活動や調査・研究を行うことも躊躇しない度胸とフットワークの軽さの土台をなしていると思います。これは必ずしも女性に限ったことではありませんが、限られた場所で「群れる」ことに総じて関心が低い本学構成員のメンタリティーは、組織の風通しを良くし、狭い人間関係の中での不毛な気遣いや摩擦を防ぎ、多様性を受け入れる寛容さを生んでいると思います。ただそうした傾向ゆえに、大学という共同体における自己の立ち位置を客観的に認識し、各自が大学のためにできることを考え、実現し、必要なときにはそこでリーダーシップを発揮するといったことからやや遠のいてしまいがちな面もあるかもしれません。しかし、男性と比較すると組織内で主導的立場に立つ機会が少ない女性が率先して協働し、個性と多様性と機動力に富んだ教育・研究組織のあり方を追求してゆけば、上智大学には新たな魅力と強さが備わるかもしれません。学生総務担当副学長のミッションには、誰にとっても安全で安心なキャンパスの創生や、学生の正課外の活動支援や、経済支援・健康支援の充実のほか、環境問題への配慮、ハラスメント防止のための体上智大学学生総務担当副学長、文学部教授。上智大学文学研究科博士後期課程中途退学。その後、フランスのアンジェ大学で博士号を取得。研究テーマは20世紀フランス文学。特にシュルレアリスム運動とその時代。19上智の女性活躍リーダーの苦労とやりがい

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