一番の変化は、多くの職員の方々とお付き合いをする機会が格段に増えたことです。これまでは、限られた部署の職員の方々と、主に学内手続きなどでやりとりをするだけでした。個々の大学には異なるビュロクラシーがあり、大学内の教職員間の関わりはそれぞれだと想像しますが、事務方には独自のルーティンとルール、ラインがあり、それを教員は尊重しつつ、教職員間の調整を行うことが大切であると学びました。学部長になってからは上位会議体や幹部との折衝などもあり、プレッシャーを感じることもありますが、それも大学行政に関わるということなのだと思っています。同時に、教員側にも職員の方々とのコミュニケーションにおいて改善すべき点があることにも気づきました。これまで私自身、この点において思い込みや理解不足で数々の失敗も経験しています。また、教育や研究の現場の多様なニーズのなかで、学院内でもっと認識されてもよいのではと思われることや、実は教員間の相互理解に不足があったと感じたこと、異なる部署間における「縦割り」によるコミュニケーションの難しさなども少しずつ見えてきました。初めての役職経験であった大学院の地域研究専攻主任の2年間は、定例会議の議題と資料を事務室の方に教えていただきながら準備するので精一杯でした。研究科や学科内での決め事が、大学暦の中で、多くの部署を回覧し、上位会議体での承認を経て、やっと決裁されるのだということが見えてきたのは、任期を終えるころでした。自分がこれまで行ってきた研究・教育活動は、大学という組織の中で、様々な方々の手を経て支えられていることを客観視させてくれる機会であったと思います。私はあまりリーダーという意識はなく、調整役というイメージでその時々の役職にあたってきました。ただ、イベロアメリカ研究所所長任期中に同研究所の創立50周年記念事業にかかわったときには、研究所の代表として歴代の所長、特に故アンドラ―デ神父様が積み上げてこられた内外との交流を維持推進しなければという思いで必死でした。所員の先生方、職員の皆さんと記念事業を無事終えるために議論を重ねたことが今では懐かしく思い出されます。上智大学外国語学部長(2023年3月まで)、同学部イスパニア語学科教授。上智大学外国語学部を卒業後、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。その後、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)でPh.D.(地理学)取得。研究テーマは南米コロンビアを中心に、ラテンアメリカの社会運動、紛争地域におけるコミュニティ組織、連帯経済など。11役職経験での気づきリーダーの苦労とやりがい
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